測量とは何か?種類、方法、仕組み等を分かりやすく解説

測量とは、土地や地形の形状、大きさ、高さ、位置関係などを詳しく調べて記録する作業のことです。その情報は地図や設計図の作成や建築物の施工に活かされます。

たとえば、建物や橋を建築するとき、土地の位置や広さや高さを知らないと正確な設計ができません。さらに、土地の境界を決めるときにも、正しい測量が欠かせません。

測量では、様々な測量機器を使って、距離や角度、高さ等を測ります。現場で測定したデータを元に、地図や計画図が作られたり、建設工事が進められたりします。

簡単に言えば、測量土地地形を「正確に知る」ための技術であり、私たちの生活の基盤を支える重要な作業です。
ここでは、測量機器の種類や測量作業の種類、それぞれの特徴から仕組み、活用例までを分かりやすく解説していきます。
測量とは

測量に使用する機械の種類とその特徴

測量で使用される機械には、作業内容や目的に応じてさまざまな種類があります。それぞれの機械は特定の測定に適しており、精度や効率を高めるために工夫されています。

主な測量機器としては、レベル、トータルステーション、GNSS測量機、3Dレーザースキャナー、UAVに搭載されるカメラやLiDAR装置があります。様々な種類の機械を使い分けることで、土地や地形の情報を正確かつ迅速に測定し、設計や建設に役立てることができます。測量はこれらの機械なしには成り立たない重要な技術分野です。

ここでは、それぞれの機器について特徴や仕組み、活用例などを詳しく解説していきます。

レベル

水準測量で使用するレベルとは、地面の高さや傾斜を正確に測定するための機械のことです。この機械を使うことで、ある地点と別の地点の高さの差を求めることができます。

レベルは、望遠鏡のような形をした光学機器です。測定する際には、レベルを三脚に固定して水平に設置し、測量用の標尺(スケールが付いた棒状の道具)を目標地点に立てます。レベルを通して標尺を見て、目盛りを読み取ることで、基準点との高低差が計算されます。

この方法は、高精度で土地の高低差を測ることができるため、道路の設計や水路の整備、建物の基礎工事など、水平や傾斜が重要な建設作業で広く活用されています。また、地面がどのように傾いているのかを調べることで、雨水の排水計画や土壌の管理にも役立っています。

簡単に言えば、レベルは土地の高さを正確に測るための機械であり、水準測量はそれを使って地面の起伏や高さを正確に調べる作業です。
レベル

トータルステーション

トータルステーション(TS)とは、基準点測量や工事現場などで使用される高精度な測量機器です。この装置は、角度距離を同時に測定できるため、地形や建築物の正確な位置を調べることができます。

トータルステーションは望遠鏡のような形をしており、三脚に固定して使います。測定したい地点にプリズム(反射装置)を設置し、トータルステーションから光を発射します。その光がプリズムに反射して戻るまでの時間を計測することで距離を求め、さらに機器が捉える角度を加味することで、測点の正確な位置を計算します。

この機械は、複数の機能を一台に備えているため、トータルステーションと呼ばれます。以前は別々の機器でそれぞれ測っていた角度距離を一度に測れるため、作業効率が大幅に向上しました。

トータルステーションは、工事現場での位置出しや地図作成のための基準点の設定、土地の境界測定など、精度が要求される場面で広く使われています。また、最近では電子化が進み、測定データを直接テキストデータとして保存したり、CADシステムと連携したりできるモデルも一般的です。

簡単に言うと、トータルステーションは、角度と距離を一度に測り、正確な位置を調べるための測量機械であり、現代の測量に欠かせない最も重要かつ一般的な測量機器です。

GNSS測量機

GNSSとは「全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)」の略で、地球上のどこにいても位置を測ることができる衛星システムのことです。アメリカのGPSはとても身近だと思いますが、その他にロシアのGLONASS、中国のBeiDou、欧州のGalileo、日本の準天頂衛星QZSSなどの衛星測位システムを含んだものがGNSSです。

GNSS測量では、これらの衛星から送られてくる電波を受信して、自分の位置を正確に計算します。複数の衛星を利用した上で、各種の位置補正技術を併用することで地球上の特定の地点の緯度、経度、高さを数センチ単位の精度で求めることができます。この技術は、広い範囲での測量や、地形が複雑な場所での測定に非常に役立ちます。

GNSSは従来の測量方法よりも効率が良く、広い範囲を短時間で測れるという利点があります。このような特徴から、建設業におけるICT建機への搭載や農業分野におけるスマート農業など様々な分野で活用が始まっている技術でもあります。
GNSS測量

3Dレーザースキャナー

3Dレーザースキャナーとは、地上レーザー測量で使用される高精度な測量機器で、対象物や地形の形状を三次元的に記録するために使用されます。この装置は、レーザー光を発射し、その光が対象物に反射して戻るまでの時間を計測することで、物体までの距離を求めます。

スキャナーは、回転しながら多数のレーザー光を発射し、空間内の数百万から数十億もの点を測定して点群データとして記録します。この点群データを使えば、対象物や地形を正確に三次元モデルとして再現できます。
3D測量

3Dレーザースキャナーは、以下のような特性を持っています:

  • 対象物に直接触れることなく、短時間で広範囲を詳細に測定できます。
  • 高精度かつリアルタイムで地形や構造物の形状を記録できるため、複雑な地形や建築物でも正確なデータを取得できます。
  • 測定結果をもとに、地図作成、構造物の変形や劣化の検出など、さまざまな応用が可能です。

具体的な使用例としては、工事現場での出来形管理、歴史的建造物のデジタル保存、トンネルや橋梁・擁壁などのインフラ調査、都市計画の3Dモデル作成などが挙げられます。

3Dレーザースキャナーは、レーザーを使って地形や構造物を三次元的に測定し、その位置や形状を正確かつ詳細に記録するための機器であり、現代の測量や設計における革新的な技術のひとつです。

UAV(ドローン)

UAVとは「Unmanned Aerial Vehicle」の略で、一般的にはドローンと呼ばれる無人航空機のことです。これらは、遠隔操作または自動プログラムで飛行し、測量点検、撮影などさまざまな業務に活用されています。

UAVレーザー測量では、UAVにレーザースキャナーを搭載して空中から地形を測定します。これにより、広範囲かつ複雑な地形でも短時間で詳細な三次元データを取得できます。例えば、山林の地形を測る場合、地面が見えにくい樹木の下まで測定できるため、山間部での地形測量や土木設計に役立ちます。

UAV写真測量では、高性能なカメラを搭載したUAVが空中から写真を撮影し、その写真を解析して地形や構造物の三次元モデルを作成します。この方法は、広いエリアを効率的に測量できる点で優れており、都市計画や農業、災害時の被害状況の把握にも活用されています。

UAVによる橋梁点検業務では、ドローンが橋の表面や構造部分を近接撮影します。これにより、従来の足場を組んだり高所作業車を使った点検に比べて、安全性が高く、効率的に細部まで確認できます。ひび割れや劣化などの問題を見逃さず、早期に発見することが可能です。

簡単に言えば、UAVは空を自由に飛び回る測量・点検のための道具であり、広い範囲や危険な場所でも安全かつ効率的に作業を進められる、現代技術の象徴的な存在です。
UAV測量

測量の目的と分類

測量には、その目的によって大まかに分類することが出来ます。
以下はその一例になります。

基準点測量

基準点測量とは、地表上の特定の地点の位置を正確に測定し、その位置を基準として他の場所の測量や地図作成、建設計画に活用する技術です。この測量の目的は、測量や設計、施工の基盤となる位置情報を提供することにあり、精度が重視されます。基準点の精度が高ければ高いほど、その後の作業の信頼性や効率が向上します。

基準点測量には、位置の精度に応じて「1級基準点測量」から「4級基準点測量」までの分類があります。それぞれの級には、観測方法や使用する機器、測量の手順などに関して厳密な規定が設けられており、これに従って精度管理が行われます。1級基準点測量は全国的な基準点の設定や極めて高精度が求められる場合に使用され、ミリメートル単位の誤差に抑える必要があります。一方、4級基準点測量は、より小規模な工事や地域レベルの測量に適用されますが、それでも一定の精度基準を満たすことが求められます。

この測量は、まず基準となる地点を設定するところから始まります。この地点は「基準点」と呼ばれ、地球上の緯度、経度、標高を非常に高い精度で求める必要があります。そのためには、地球規模で位置を測定できる「GNSS(全球測位衛星システム)」や、高精度な光学式測量機器であるトータルステーションが使用されます。GNSSを用いる場合、複数の衛星からの信号を受信し、それをもとに位置を計算します。一方、トータルステーションでは、測量機器がターゲットとなるプリズム反射板や標識との間の距離や角度を測定し、位置を割り出します。

基準点測量の最大の特徴は、非常に高い精度と全国的な統一性が求められる点にあります。1級基準点から4級基準点まで、それぞれの目的や条件に応じた適切な精度が確保されることで、測量結果が一貫性を持つと同時に、建設や設計、災害復旧といった幅広い分野での信頼性が保証されます。

この測量技術は、例えば大規模なインフラ建設、道路や鉄道、橋梁の設計・施工、都市計画、地図作成、土地の境界確定といった多岐にわたる分野で活用されています。また、災害後の復旧作業では、被害範囲の把握や復興計画を立てる際に基準点測量のデータが活躍します。

基準点測量は日常生活では直接目にすることは少ないですが、その「精度」と分類に基づく厳格な運用が、社会インフラの効率的な構築や運用、そして安全性を支える重要な基盤となっています。
基準点

水準測量

水準測量とは、高低差を測定して、地表の各地点の標高を求めるための測量手法です。この方法では、専用の測量機器であるレベルと標尺(スケールが付いた棒状の道具)を使用し、高さの差を視覚的に測定します。その特徴は、高い精度で「高さ」を測定できる点にあります。特に、建築物の設計や地形の詳細な把握が求められる場面で欠かせない技術です。

水準測量の仕組みは、測量者が水平に設置されたレベルを用いて、視準線上でスタッフに表示される数値を読み取ることにあります。この数値の差から、高さの変化を計算します。測量を進める際は、一つの地点から次の地点へと順々に高さの測定を行い、全体の標高を正確に把握していきます。

この測量方法には、目的や必要な精度に応じて、1級水準測量から4級水準測量までの異なる等級があります。1級水準測量は最も高い精度を要求されるもので、国家規模の高さデータの構築に使用されます。一方、4級水準測量は工事現場や地域的な測量で使用され、精度の要求も1級ほど厳しくありません。ただし、いずれの場合でも、定められた規定に従って精度を管理することが重要です。これは、測量結果が信頼性の高いものでなければ、後の工事や設計に支障をきたす可能性があるためです。

また、水準測量で得られる標高データの基準には、東京湾の平均海面(東京湾中等潮位、通称T.P.)が広く用いられています。このT.P.を高さの基準点とすることで、日本全国の標高が統一された基準に基づいて比較可能になります。これにより、都市計画や防災計画、地図作成など、さまざまな分野で水準測量が活用されています。

精度の高さや基準の明確さを活かし、水準測量は信頼性のある地形情報を提供する重要な技術として、今日も多くの現場で活用されています。
水準測量

現況測量

現況測量は、土地の現状を正確に記録するための重要な測量手法です。これは、建物や道路の設計を進める際に、現地の地形地物を詳細に把握するために実施されます。この測量では、建設予定の土地だけでなく、その周辺の土地も測定対象となることが特徴です。これは、建物が完成した際に隣接する構造物や道路との調和を図り、建設後のトラブルを防ぐためです。

現況測量の対象には、建物、ブロック塀、電柱、道路、樹木、排水溝などが含まれます。これらの位置関係を正確に測定し、現況平面図として視覚化することが求められます。特に、隣接する敷地との高低差や建物の位置、道路の勾配や幅員などは、建設計画において重要な情報となります。

測量の方法としては、トータルステーションやGNSSがよく用いられますが、近年では3Dレーザースキャナーを使用することも一般的です。この技術は、レーザー光を用いて周囲の地形や地物を三次元的に計測するもので、非常に短時間で高精度なデータを取得することができます。3Dレーザースキャナーを使用すると、土地全体を3次元点群データとして記録できるため、後の設計段階での詳細な分析に役立ちます。

現況測量は、単に土地の現状を記録するだけでなく、周辺環境との調和を図り、建設計画全体の信頼性を高めるために欠かせない作業です。その成果は、私たちの日常生活に密接に関わる建築や都市開発において、大きな役割を果たしています。
現況測量

路線測量

路線測量とは、道路や河川といった線状の構造物を計画・設計・施工するために行う測量です。この測量は、路線となる土地の形状や高低差、周辺の地形や地物を詳細に調査し、それを基に設計や施工計画を立てるための基礎データを提供します。特に、道路や河川の整備においては、土地の形状や線形が大きな影響を及ぼすため、路線測量が不可欠です。
路線測量の工程は、以下のような流れで進められます。

  1. 線形決定
    最適な道路・河川のルートを決める作業です。これには、地形や土地利用の状況、環境への影響を考慮しながら、技術的かつ経済的な観点で最適なルートを選定する作業が含まれます。現況測量の結果等をもとに、カーブや勾配を考慮したルートを設計します。

  2. 中心線設置測量
    決定したルートに基づいて、現地に中心線を実際に設置します。
    この中心線は、道路や河川の中心を示す基準となる点であり、以降の測量や施工において基準となるため、非常に正確に設置される必要があります。

  3. 仮BM(ベンチマーク)設置測量
    路線沿いに基準となる標高を示す仮ベンチマークを設置します。これは道路や河川の標高を正確に測定するための基準点で、路線全体の高さ基準が統一され、正確な高さ計測が可能になります。

  4. 縦断測量
    路線の中心線に沿って地面の高低差を測定する作業です。これにより、路線の勾配や高低差が明確になり、道路や河川の縦断面図が作成されます。

  5. 横断測量
    中心線を基準に、路線の左右にわたる地形を測定します。これにより、横断面図が作成され、道路や河川の幅や周辺の地形を正確に把握することができます。

  6. 用地幅杭設置測量
    設計された道路や河川の用地幅を明確にするため、現地に杭を設置します。この杭は、用地境界の確認や施工時の基準点として重要な役割を担います。

路線測量の結果得られるデータは、道路や河川の設計図作成に活用されるだけでなく、施工時の基準としても使用されます。例えば、道路であれば、安全性や快適性を確保するための勾配や曲線の設計に役立ちます。河川であれば、流量や氾濫防止を考慮した堤防の設計に必要な情報を提供します。

このように、路線測量は道路や河川の計画・設計・施工において基礎となる非常に重要な作業です。工程ごとに精密な測量を行い、信頼性の高いデータを提供することで、社会基盤の整備に貢献しています。